図書館で
思い出した。
あたしは自分のあたまで何かを考えたくて、大学も哲学科を選んで、自分の生きていく世界がどんなものか知りたくて、知りたくて、少しでも知ると面白くて、懸命に本を読んでいた。
バスの中で読んだ本のこと、図書館で唐突に思い出した。
よく電車やバスで本を読んでいた。
移動時間は読書、が決まり事で楽しみだった。
懸命に、考えようとしていた。
ひとりきりでも構わなかった。
こどもを産んだころからかなあ。
こうりつ、を気にしだしたのは。
効率よく、要領よく、時間をかけずに手際よく。
お嬢さんでぼーっと生きていた頃はそんなこと気にしなかった。
別にいいや、と思っていた。
それじゃ済まされなくなった。
ひとりでぼーっとしてられなくなった。
していることがこわくなった。
バスの中で厚みのある単行本を読んでいた自分を手のひらにのせてながめてみる。
忙しくしているようで、いつでもぼーっとしていた。
だいすきだ、きみのこと。
愚かでこわがりで、何も知らないきみのこと、
こころからいとしく思うよ。
忘れていないよ。
知りたいことをまた、追いかけるよ。